物質は「気体」「液体」「固体」だけではない
「気体」「液体」「固体」という分類の仕方に
果たして本質的な意味があるのだろうか。
確かに、一定以上の密度が加わった時、劇的に様相を変化させる現象(=相転移)は起きているし、
その前と後とでは全体的な振る舞いかたは大きく違ってくる。
しかし、そういう物性の変化は、何も「気体」「液体」「固体」に限ったことではない。
大地震を引き起こすきっかけとも言われる「プレート」は地上の私たちの感覚からすると「固体」だけれども、
地中深くの(地上では想像もつかない別世界の)重力と質量が常に充満している状況下では
地上の私たちの感覚で言うところの液体のような振る舞いをしているという。
巨大な体積と超高密度の流動体、それが「プレート」の実態だと聞く。
そうだとすれば、「プレート」は、
私たちの感覚で言うところの「液体」でも「固体」でもない(もちろん「気体」でもない)。
しかし、よく考えてみれば、
空気中を落下して水面に激突すれば、コンクリートに激突したのと同じ衝撃が生じるというし、
海鳥は時々、海に飛び込んでは餌を獲り、
ドジョウは水中を泳ぎながら水底の土壌(!)を吸い込んで餌を獲るのだから、
結局、ある一定の圧力や密度の境界面の両側で呼び名が変わっているだけに過ぎず、実は全体がすべて繋がっているのだ。
そして、こうした境界面は、
まるでマトリョーシカのように繰り返し現れる。
それが実態なのではないのだろうか。
延々と断続的に続く境界面のうち、私たちの日頃の馴染み深い現象の部分だけを切り取って
「気体」「液体」「固体」と名付けているだけに過ぎない。
そう考えるのが妥当のような気がしている。