「ありのままで生きる」ことは難しい | 考えすぎ

「ありのままで生きる」ことは難しい

「ありのままで生きる」ことほど人間にとって難しいことはない。


生まれて間もない赤子や幼な子たちは「ありのままに生きている」が、
「ありのままで生きる」ことをしている訳ではない。
まだ、そういう意志や意識を継続させられるだけの物心がついていないから。

自意識が芽生え、自我が騒ぎ始めてアイデンティティを確立しようとすればするほど
「ありのままで生きる」ことのハードルは上がっていく。
気付いてしまったことを気付かなかったことにすることは事実上できない(もちろん事故や老化で根本的に忘れてしまうことはあるが、それは自分でそうしていることには成らない)。

「ありのままで生きる」ことを勧めるキャッチコピーをよく見かけるけれども、
言うほど簡単ではないどころか、その実践そのものが即ち修行になってしまうくらい非常に難しいことだと感じる。
本来なら極めてシンプルなことであるはずなのも事実だが、
言葉の印象とは裏腹に非常に難しいことを簡単そうに見せかけて推奨するのは、心理的な詐欺行為に近いのではないのだろうか。

特に荒んだ心理状態になりやすい昨今、そういう聞こえのいい言葉を弄んで金銭的収益が発生しているような状況に対しては
個人的には、違和感と警戒心と疑念を禁じ得ない。